大切なもの

死ー両親との別離

2014.03.23

今いる病室から、緩和病棟に移る際、記入しなければならない
書類やアンケートがあってね。

そこにこんな質問があったんだ。

患者本人への問いで

「生きていくうえで何を大切にしていますか?」

他の設問は私が答えられたけど、
これはお父さん本人に聞かなきゃわからないな、と思って、

「ねぇお父さん、
 お父さんが生きていくうえで、大切にしてたことって何?」

と尋ねてみた。

うーん、と考えこみ沈黙。

私はぼんやりとだけど、特にないな、とか、わかんないよ、とか、
そんな答えが返ってくるかと思ってた。

そしたらお父さん、

「家族、かな・・・。

 俺には、財産もなんにもないしな、
 俺には、家族しかないもんな。」

って。

私、焦りました。
お父さんから、家族なんて答えが来るとは思いもしなかったから。

「そう、家族を大切にしてたんだね」って言ったら、

「まぁでもな、好き勝手ばかりやって、迷惑ばかりかけたけどな」と
苦笑いしてた。


私は思いました。

この人は、本当に家族を大切に思ってたんだろうと。
でも、それができないことに、もがいてたんじゃないかと。

家族をまともに養えないことが不甲斐なかったり、
うまく愛情表現できないことに、戸惑い、もがき、
苦しんでたんだろう、と。

父は戦前の動乱に生まれ、幼少のころ両親を失い、継母に捨てられ
孤児院で育ちました。

その後、農家に引き取られずいぶん苦労したようです。
子どもの頃大病を患い障害者となり、ひとりで生きてきました。

愛を受ける機会の少なかった父は、愛を与えることがうまくなく、
私たちは、そのことで、ずいぶん悲しい想いをし続けてたと思う。

でも、今ならわかる。

というか、違う場所から父を観れる。

父は、優しい人なんだ、本当は。

でも、彼が体験してきたたくさんの苦しみが、父の源を覆っていた。

孤児である父。
そして、唯一の肉親である私。
私に子どもはいない。

父のルーツを知らないこと、私のルーツへの不信感。
父からの暴力を、その悲しみを連鎖してしまうかもしれない恐れ、
私の中にある彼の血。

私も苦しかった。

でも、今はもう消化してる。

私は、お父さんを愛おしく感じてる。
もう大丈夫だ。

Om Shanti.

続く↓↓↓

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